インナーチャイルドを癒す

インナーチャイルドとは

インナーチャイルドは「内なる子ども」と言われております。

誰もが持つ幼少期の記憶や体験が、大人になった「今」と繋がり、目の前で起きる様々な問題に反応し、子ども時代に巻き戻されるような思考や体の反応によって、生きづらさを感じてしまうことがあります。

時にはインナーチャイルドが大きく影響をして、仕事や結婚生活、恋愛問題、燃え尽きなどの大きな問題へと発展することもあります。

インナーチャイルドを癒していないと、同じような葛藤を繰り返しがちです。

仕事が長く続かない、離婚と再婚を繰り返してしまう、友人関係が続かない、といったケースは、周囲の人に原因や責任を追及するだけでは解決しません。

ご自身の中にある人生の課題に向き合うことで、問題を繰り返すことを予防することが出来ます。その結果、必要以上に人を否定しない、理解を深めることができるようになります。

自分を理解せず、他者を理解しようとするから混乱が起きるのです。

今回は、幼い頃の自分に会いに行き、ご自分への理解を深めること、そしてその具体的な方法をお伝えしていきます。

アダルトチャイルドとインナーチャイルドの違い

インナーチャイルドは機能不全家族であることに限らず、誰もが持つ、内なる子どもの心です。

「アダルトチャイルド」は言葉こそ似ていますが、依存症の治療の現場で生まれた言葉で、機能不全の環境で育ち、様々な生きにくさや困難を抱え、傷ついた状態をいいます。共依存症者としての課題を持ち、今の生きにくさが幼少期の親子関係に原因があったと自分で認めた人のことを言います。

アダルトチャイルドは万人に当てはまりません。しかし、インナーチャイルドは万人がそれぞれの中に持つ幼い頃の自分の心です。

アダルトチャイルドについては、こちらの記事をご参考になさってください。

アダルトチャイルドが自由になるまで

健康的なインナーチャイルドが育つ背景

健康的なインナーチャイルドの持ち主は、存在するに値する信念を周囲の大人から受け取ります。たとえ失敗しても、間違ったとしても、それを正す道が示され、存在までは否定されることがありません。そのままでよい、よい子として成長していきます。

傷ついたインナーチャイルドが育つ背景

傷ついたインナーチャイルドの持ち主は、存在することに罪悪感や恥の信念を周囲の大人から受け取ります。

100点でなければ許されない、物分かりのよい、大人を困らせない存在でなければならない、言うことを聞かなければひどい仕打ちをされる、といった緊張感の中で過ごさなければなりません。

失敗や間違ったことをすると、周囲の大人から、けなされ、恥をかかされたと罵倒され、存在を否定されるような言葉や態度を浴びるようになります。そのままでよい、という訳にはいきません。

よい子のふりをしなければ生きていけないのです。

そのため、必要以上に物分かりのいい子を演じたり、優等生になったり、世話焼きをしたり、周囲から褒められようと一生懸命になったりします。

傷ついたインナーチャイルドを持つ大人たちは、見捨てられることを極度に恐れます。大人になって見捨てられないために、仕事をし過ぎて燃え尽きる場合もありますし、恋愛においては、必要以上に尽くし過ぎたり、パートナーの行動を全て把握していないと気が済まなかったりします。

傷ついたインナーチャイルドはいつも見捨てられ不安を抱えています。

傷ついたインナーチャイルドを癒す必要性

見捨てられ不安を抱えたまま大人になると、共通の言動が見受けられます。そこには、お決まりのセリフがあります。

「あなたのためを思って」です。

この言葉は思いやりや、愛情のふりをした、見捨てられないための自分のための防御の言葉でもあります。

この防御の言葉を上手に使いながら、周囲から褒められ、頼りにされ、認めてもらうことで、やっと存在に値する自分になれるのです。

生きていくための底上げ作業を行わなければならない苦しさがある、わかっていてもやめられない、どうやって手放したらいいのかわからない、このようなケースで溢れています。

苦しさを自覚できるということは、癒す必要をどこかで感じていることですから回復への希望があります。

ところが、苦しいことさえ分からずに不毛な人間関係にのめり込んだり、承認欲求や自己顕示欲に振り回されたり、うまいこと人に利用されてしまうケースも後を絶ちません。

かけがえのない人生を豊かに生きるために、傷ついたインナーチャイルドを癒す必要があることをおわかりいただけたでしょうか。

ではどのようにして、この生きづらさ、しんどいパターンから抜け出せばいいのでしょうか。

インナーチャイルドの声を聞く

子ども時代はみな、無力です。

周囲の大人の価値観や考え方に合わせなければ生きていけません。理不尽なことへも迎合しなければならない生き方は、知らず知らずのうちに、悲しみや怒りが内蔵されていきます。

あの頃の自分がどんな思いだったのか?、どう扱って欲しかったのか?それを思い出し、過去の自分と向き合うことで、自ずと、今抱えている問題解決への糸口が見えてきたりもします。

わたくしもまた、「あなたのためを思って」が口癖で、自分を底上げしなければ生きていけない状態にありました。

リコラのインナーチャイルド

勉強会や講習会で、インナーチャイルドを扱う場合、自分の子ども時代を振り返ります。ある時に3歳児くらいのリアルな大きさの人形を抱っこする機会がありました。

「幼い頃の自分だと思って抱っこしてみて」と言われたものの、気味が悪いやら、怖いやらで、体から浮かしたままで、抱っこをしたフリをして早々に止めてしまいました。

それほど、自分の子ども時代が薄汚れていて触るのもいやなほど、嫌悪の塊でもありました。

自分のインナーチャイルドは野生の獣が檻の中で暴れているイメージでした。

もはや人のカタチもしておらず、べっとりとした、一度付いたら離れないような恐ろしさもあり、直視することも困難な状態でした。

こんなインナーチャイルドを持つ私ですが、時間をかけ、適切なガイドをして下さる先生方とともに、自分を立て直し、その経過の中で、インナーチャイルドの育て直しのために、今も回復のための取り組みを継続しています。

傷ついたインナーチャイルドの背景を辿る

インナーチャイルドを育て直すにあたり、どのような家族の中で生まれ、どのような気持ちで過ごし、家族の中で何が起きていたのか、整理する必要があります。

この作業は時に心の痛みを伴いますが、適切な援助者とともに、時間をさかのぼり、「あの頃の私」に会いにいくことが大切な作業となります。

普段は思い出すこともなかったあの頃の自分は、本当はどんな気持ちだったのでしょうか?

リコラのインナーチャイルド

私のインナーチャイルドは檻の中で暴れる獣のようなエネルギーの塊でした。一体なぜ、このようなイメージになってしまったのか?ゆっくりと思い出してみます。

私は3歳で自分の部屋を与えられ、その時から一人で寝かされていました。部屋の中央にはベビーサークルが置かれていました。

時々様子を見に来る母親は、ぐずる私をなだめては、やがて部屋から出て行ってしまいます。その背中、暗くなった部屋に心細く灯るナイトランプの光、今でもはっきりと思い出すことが出来ます。

自分の見捨てられ不安は、まさにサークルの中に置いて行かれる心細さ、ここに見捨てられ不安の原点にあることを理解していきました。

この時に、サークルと檻が結びつき、小さな私は非常に強い悲しみのエネルギーとともに生き抜いてきたことを理解しました。

自分のインナーチャイルドに名前を付けてみませんか?そんな提案も頂き、ドロドロの薄汚い存在だけど、せめてかわいく飾ってあげようと「リボンちゃん」と名前をつけ、ドロドロの姿に赤いリボンをイメージの中でつけてあげました。

インナーチャイルドの「リボンちゃん」の誕生

もはや手の付けようのない、この子の声をじっくりと聴いていきます。

ひとつひとつのエピソードから、本当の気持ち、親にこうしてほしかった、こんな言葉をかけて欲しかった、あの頃の自分の声に耳を傾けながら、やがて、リボンちゃんは女の子のカタチとなり、私の横でお行儀よくお座りもできる、そんなインナーチャイルドに成長していきます。

この子を通して、自分が大人になってから生きづらかったことが見えてきました。

同じパターンで消滅してしまう人間関係、抑圧されることに耐性がついて理不尽な扱いにも迎合してしまうこと、与え過ぎてしまうこと、現実離れした不安、大人になって抱えた問題は、あの頃の自分が背負わされた環境や親子関係にあったことを理解していくと、目の前で起きた心のざわつきを冷静に観察できるようになります。

そうなると感情で行動することも減り、理性的に物事を考えることが出来ます。

無駄に感情のエネルギーを消耗せずに自分をコントロールすることが出来るようになります。

インナーチャイルドのケアをしないとどんなことが起きるのか

インナーチャイルドの声を聞く前

リボンちゃんに出会う前の自分は、周囲をコントロールすることばかり考えていました。

ざわざわとする人間関係については、大きな悲しみや怒りの中で、周りに変化を求め、自分を傷つけたことを謝って欲しい、もっと大切に扱って欲しい・・・・あげればきりがありません。

しかし、これでは物事は解決しません。

自分が都合よく相手を動かそうとする関係は、結局のところ、自分も都合よく使われることがほとんどなのです。

これでは良い人間関係が構築できる要素がありません。

インナーチャイルドを理解し、自分のニーズや感情を整理する作業をしている人と、していない人では、考え方、価値観、感情に大きな差が出てきます。

それは人生の質にも大きな違いが出てくると言っても決して大げさな話ではありません。

インナーチャイルドを通して問題を解決していく

自分ことをわかって欲しい、相手に変わって欲しいと思いながら、長年の間、ご自分の感情に蓋をしながら、耐え忍び理不尽なままに過ごされてきているケースは非常に多く存在します。

ある時は、仕事の人間関係、ある時は夫婦関係、ある時は学校で、ママ友や友人関係、恋人関係などどんなところでも葛藤を抱えて過ごすことはあるでしょう。

この耐え忍んできたエネルギーはやがて「怒り」になります。八つ当たりのように周囲に当たる人もいれば、自分の内側で自分を攻撃するような怒りを抱える場合もあります。

すると周囲の人がだんだん遠ざかっていったり、何かしらの体調不良を起こしたり、いつも気分がすぐれなかったり、様々な不具合が発生します。

このような時には、是非、あの頃の自分に戻り、本当はどうしたいの?今はどんな気持ちなの?どんな声を掛けてもらいたいの?と語りかけてみましょう。

我慢ばかりしてきたあなたの心の深いところから、「本当は淋しい」「もっと話を聞いて欲しい」「あなたはあなたのままでいいのよ」そんな言葉と出会えるかもしれません。

インナーチャイルドの声を聞くことは素直な自分の声を聞くことと同じです。ここには嘘、偽り、見栄、虚勢といったものはありません。どこまでも純粋な本音しかありません。

周囲との調和を考えるあまりに、置き去りにしてしまった本当の私の声を聞くことは、今抱えている問題を解決に導く糸口となります。

具体的な癒し方

インナーチャイルドやアダルトチャイルドの癒し、ヒーリングなど、様々なセラピーがあります。ここではリコラが実践した2つのセラピーをご紹介いたしましょう。

インナーチャイルドからの手紙

子どもの自分が今の私に宛てた手紙です。

この手紙は実際に私がセラピーの終盤で、セラピストから提案を頂き、書いてみました。リコラのインナーチャイルドである「リボンちゃん」が私に宛てた手紙です。

リボンちゃんからの手紙

リコラさんへ

わたしのこと、捨てないでくれてありがとう。

わたしは、惨めで汚くて誰からも相手にされない、とても薄暗い存在でした。都合のいいときだけ、都合のいいように弄ばれ、自分を持つことを許されず、いつも抜け殻のようなわたしのことを処分せずにいてくれてありがとう。

自分がいま、こうして生きているのはリコラさんのおかげです。

人並みの温かさ、ぬくもり、安心感、優しさ、どれも味わったことが無くて、似た物をリコラさんはいつもわたしのために、探して見つけてくれたけど、結局どれも裏切られるようにホンモノではありませんでしたね。

きっと、ホンモノは、自分で作るものなんだよ、と、リコラさんは教えてくれましたね。

これから、ホンモノを見つけて作りたいと思います。

もう、安心してるフリも、愛されてるフリも、満たされてるフリもしなくていいですね。優しさを探し求めることもしなくていいですね。

そのまんまでいいですね。

フリをするのが一番苦しくて惨めです。

リボンより。

この手紙を通して、自分の生き方や人生における選択の良くないクセは、生き抜くためのスキルであったこと、そして、それは必要ではなくなったことなどを理解し、自分に落とし込むことが出来ました。

ずいぶんと頑張って生き抜いてきたな・・・と自分のことを深いところで理解し、自分をほめることが出来ました。

もう一つのインナーチャイルドセラピー

ベビーサークルに入れられた自分は本当はどうして欲しかったのか、私は子ども向けのフィギュアを使い、幼少期の自分を再現しています。

ベビーサークルに入った赤ちゃんうさぎのフィギュアです。

そして、この赤ちゃんうさぎのために、おかあさんうさぎも用意しました。

このお母さんは、安心で安全で、全力で赤ちゃんうさぎを守ってくれる揺るぎない存在です。

おかあさんうさぎにあかちゃんを抱っこしてもらい、これを手のひらに乗せて眺めてみます。

とても安心で安全な温かさをイメージしながら、自分の心に落とし込んでいきます。

この光景は大暴れしていた私のインナーチャイルドを大人の私が育て直ししている姿そのものです。

もう大丈夫だよ、泣いてもいいし笑ってもいいし、どんなあなたもそのままでいいのよ、私はうさぎのあかちゃんを通して自分に語り掛けています。

気持ちがざわついたとき、この作業を行うと穏やかな感情にリセットされていきます。

インナーチャイルドの癒しは心の成長

インナーチャイルドの癒しは「これで終わり」というゴールはありません。

完治ではなく、回復し続けること、言い換えるなら成長し続けることです。

人生の課題に取り組み、今の生きづらさを乗り越えていくことは人としての成長に他なりません。それは、一人ひとりが違うので、競うものでも比べるものでもありません。

自分との調和を取ることで、今までの生きづらさの解消につながります。

幼い頃のあの子からのメッセージは、非常に大きな可能性やエネルギーを秘めています。そのエネルギーは、今抱える人間関係の悩みや葛藤を解決する大きな大きな力です。

その力に気づけるのは、ご自分だけです。カウンセラーやセラピストが出来ることは、本人の力を信じ、サポートと見守りのスタンスでお手伝いをします。

自分の生い立ちを振り返り、自分の辿ってきた道を見つめ直すことで、自分と仲良くなれるのです。

自分と仲良くすることが出来ずに、他者と仲良くすることができるでしょうか?

恋愛、夫婦問題、大きな決断をする前に、自分のインナーチャイルドを見直す機会を持つことで、自分の選択に納得のいく判断が出来るようになります。

あの頃の自分を置き去りにしたままで幸せになれるのかどうか、一度立ち止まって考えてみることも必要かと思います。

この記事に対するお問い合わせ、またはカウンセリングご希望の方は下記のフォームよりご連絡ください。

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